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2017/03/23

講 演

NBミーティング

2016,1,10
マツダR&Dにて

講演
マツダ・ロードスターの二代目主査、
貴島孝雄さん


■要約■

<人馬一体>

人馬一体のルーツは1983年代に山本社長(当時)が発表した
「感性エンジニアリング」。
その意図は、機械をただの消費資材でなく、
長く使って愛着の湧くような道具にする・・・という考え方である。
使い捨ての製品には抱かない感情がわくような商品、
形はなくてもいつまでも心に残るような製品、
それらを生み出す技術。
それがマツダの考え方、
ひいてはロードスターの開発に理念として生かされている。

そして、初代から続く「人馬一体」のコンセプトは、
NBロードスターリリース当時に、それなりに有名な評論家の方から
「もう古い」というご指摘もあったが、私たちは揺るがなかった。
ちなみにロードスターの操舵イメージは流鏑馬(やぶさめ)にあり、
走る馬を操舵しながら矢を放つ、その姿にある。
後にデミオやアテンザの主査からも、
人馬一体はどうやって作り込んでいくか相談をされていた。
もちろんFFとFRでの挙動の違いはあれど、
その用途に準じた「人馬一体」は必ず存在し、
その考えは「Zoom−Zoom」や「Be a Driver」といった現在の
マツダにまで引き継がれる。

昨年(2015年)トヨタとマツダの業務提携発表があったが、
その際に豊田章夫社長から「マツダは人馬一体」の言葉をいただき、
そのコンセプトは外から見ても浸透されたのだと実感している。

<NBの開発主旨>

ロードスターは3代目RX−7の主査をしていた当時、
向かいに席にいらした平井さん(初代ロードスター主査)から、
ロードスターもよろしくと告げられ、NA8シリーズ2から担当していた。
ちなみに当時、RX−7は三代目で終わることが決まっていて
エイト(RX−8)の話があったのだが、それは興味がなかった。
(※ちなみにRX−8の最後に主査代行をされています)

また、その流れから二代目ロードスター(NB)を引き受けたのだが、
最初の印象は「絶対失敗する、嫌なクジを引いた」だった。
そこで迷走せずに立ち返るきっかけになったのが、
初代が何故ヒットしたかを「感性エンジニアリング
(=愛着を持つ商品をつくる)」に
基づいて紐解いていったことだった。

一般的な二代目商品は初代よりも馬力増強や空間確保、豪華装備などの
デコレーションを行い失敗する事が多い。
NAロードスターはライトウェイトスポーツの理論に基づいて、
愛着が湧くデザインを始め、軽量化のためのアルミ採用や、
重量配分の拘りでバッテリーをトランクに乗せるなどを行っている。
そう考えると初代に勝つにはキープコンセプトを貫きつつ、
より「楽しさ」を進化・追求していく方向性でしかないと考えた。

販売対象に関して、既にNAのファンになっている人は対象外、
買い替えを促す必要はないと思った。
ロードスターのそもそもの志は、旧ライトウェイトスポーツを、
現在の技術で復活させること。
レストアをするのが困難ならば、
新車を・・・という想いから始まったからだ。
したがって、レストアの必要ないNAオーナーに対して
NBを購入してくれとは言ったことがない。
機械的な劣化、もしくは家族や彼女のために最新の安全装備が必要ならば
選んでくださいとだけお願いしたのだが、
そうしたら営業にとても怒られた・・・
数字的なところでは、
あれだけ成功した初代の7割売れれば成功だという目標を立てた。

<NBの方向性>

二代目ロードスターのフルモデルチェンジの理由は、
当時のリトラクタブル・ヘッドライトが欧州の配光基準に
適さなくなることを受けてだった。
そのまま販売するために、中国に製造拠点を置いて
コストを下げ、ヨーロッパでは売らないとか様々な案があったのだが、
現実的でなかったので全て刷新した。

すると、アメリカから送られてきたのが
(NBの元のコンセプト)2.5リッターのバカでかいコンセプトモデルで、
これを林浩一デザイナーにNAと同じ寸法にリファインしてもらった。
(講演後にお話し頂いたのですが、林浩一デザイナーとは同期入社で、
戦友であったと仰っていました)

NAとNBは基本的なコンタクトライン(ボディ骨格)は
同じであるが、とにかく作り込んだのは「日常の楽しさ」の部分。
峠やサーキットだけではなく、使い勝手でも「楽しい」クルマにしたく、
例としてはスペアタイヤをフロア下に移動して、
ゴルフの43インチヘッドが入るようにトランクサイドの空間をへこませて確保した。
実際にゴルフに一人で行くさびしい人はいないが・・・

そして、紆余曲折の末完成したNB記念パーティの際に、
こっそりとフォード資本側から「NCを作ることが決定した」と告げられた。
(※その頃は三代目は担当する予定はなかったはずです)

<NBの熟成>

NBの想い出としては、モデルサイクル維持のために
「10周年記念車」を発表した。
これはエンジンのピストンを計量し、
近似値のものを厳選採用するという作り込みを行い、
エンジン屋に文句をいわれた。
しかし、このわずかとも思える差がフィーリングを呼び起こす。
これが理論に基づいた感性エンジニアリングだ。
しかし、厳選されなかったピストンはどこに行ったかというと・・・
他のクルマに使用されている。

そしてNBは2003年に欧州でポルシェと競って
「ベストハンドリングカー」を受賞した。
その理由は、ポルシェはサーキットや峠で
確かに速いけど、MX−5はどんなステージで乗っても
「楽しい」という評価を頂いたからだ。
それは当然の事で、NBの基本車体はNA由来のもので、
普通車のモデルサイクルの倍以上、14年以上メカと走りを熟成させることが出来たからで、
世界でもそんなことをしているのはポルシェかNB位だと思う。

また、NB時代に700,000台まで到達し、
当初の目標であったNAからの7割の販売台数を達成する事が出来た。

<ロードスターとは>

感性という言葉を幾度か使ったが、
愛着を持って乗ってもらうためのクルマが「ロードスター」。
それはNAからNB、NC、NDとすべて変わらないし、
これからもそうあり続けるだろう。

■質疑応答■

Q■若者のクルマ離れが懸念される昨今、
特に最近のスポーツカーはNDも含めて高い気がするのですが、
どう思われますか?

A■確かにおっしゃる通り。
現在のクルマは初任給から考えると、
新車なぞなかなか買えない。
そうなると、かつては、中古のスポーツカーが選択肢に入ったのだが、
それも今は選択肢が乏しい状態。
特にロードスターは皆さんが手放さないので、
なかなか市場に出回らないのです。


Q■ロードスターターボをリリースした理由は?

A■米国ディーラーの企業オーナーで、レースを趣味にしている方がいるのだが
「MX−5でレースに勝ちたい」とオーダーがあり、
10000台売ると言ってきたので、国内では二つ返事で予算承認された。
そのついでで日本でもリリースをおこなった。
もちろん馬力重視ではなく、人馬一体のバランスが取れるような調整をおこなった。
しかし、結局7000台しか売ってもらえず、
理由は「モデル末期だったから」といわれてしまった・・・


Q■今後乗り続けるにあたり、覚悟を決めたい。
そこで、メーカーからなくなる前に確保しておくべき
パーツはありますか?

A■基本的に、今はワンオフで何でも作れてしまうので、
価格を考えなければそれは無い。
特にNBは海外でとても売れているから、
中古も含めてパーツはワンサカあるので、
いざとなれば通販でもいけると思う。

(ブッシュの質問を受けて)
ブッシュの耐用年数は、
ゴムで出来ているパーツなので経年劣化で硬くなり、
それが新車に比べて馴染み「味」になる事もあるのだが、
一定期間でねじり剛性が低下する。
しかし、その劣化は徐々に進行していくので、
いつも乗っているオーナーでは気付きづらいはず。
本当に気になったら変えて欲しい。
ただ、ブッシュが駄目になったからといって、
いきなりアームが落ちる事は無いので安心を。きちんと走れます。

(※主催者補足:ロードスターはオープンカーなのにボディ剛性は非常に高く、
ボディが緩くなってきた、ガタが来たと感じたら、
ブッシュ交換のみで格段なリフレッシュを体験できる。
交換時期は、5万キロで感じたら5万キロ、10万キロで感じたら10万キロと、
個人の感覚で大丈夫。ボディ強化を考えるならば、
足回りだけでなく、エンジンマウントなどを含めた、
各種ブッシュを見直すことをお勧めします)


Q■NAから比べて、ここは拘ったというパーツはありますか?

A■サスペンションのセッティング、特にキャスター角を始めとした操舵安定性の部分。
実はNA開発当時、一旦設定した足回りを最終的に変更されてしまって、
NBは最初にそれを戻すところから始めた。
正直NAだと、アウトバーンでフラフラして危ない。

また、拘りとは違うかもしれないが
ドアトリムのパーツにはサイドエアバッグが入る予定だったが小型化が出来ず、
断念した経緯がある。(※ちなみにNCでは実現されています)


Q■ボディカラーはどのようにして決めていくのですか?

A■ふたつの観点から決まってくる。
先ずはコストの点。マツダでは塗料のタンク容量が決まっていて、
基本的に一ヶ月単位でそれを消費し、それを他車種と共有する。
特にロードスターのようなクルマは専用色の設定が難しく、
それに併せている形である。
それでも一色だけは専用色を選ぶことが出来たりする。
モデルサイクル合間で発表される限定車は、
そのタンクを使い切ったら塗れなくなるので、台数が限定される。

次にコーディネートの件。
マツダには専門でやっているカラーデザイナーがいて、
全車種を壁に並べて数年単位のロードマップにしている。
カラートレンドから選んだボディカラーは沖縄で年間単位の耐候テストを行い、
それをクリアしたものが市場に出てくる。
(※クリスタルブルー、スプラッシュグリーン、ガーネットレッドは当時のカラートレンドです)
他メーカーからも同じ時期に似たようなボディカラーが出てくるのはそのため。

また、近年ではNAに設定されていたブリティッシュ・レーシンググリーン(ネオグリーン)のような緑色は
流行らなくなっており、全メーカーからも緑の設定は減りつつある。


Q■マツダが赤、ソウルレッドをイメージカラーにしているのは広島カープと関係はありますか?
ちなみに広島のイメージカラーも赤です。

A■最近ヘルメットをソウルレッドにしたのは聞いているけれど、直接は関係ないと思う。
でも、赤をイメージカラーにするのはエモーショナルなスポーツカーとしては当然で、
NBのコンセプトモデルも赤かったでしょう?似合うように作っている。
また、赤は購買意欲を促進する色でもあるので、
スーパーの入口にトマトや苺をおいているのはそのせい。
逆に、イメージカラーが赤ばかりになってしまった今のマツダはどうかと思う。


Q■トヨタが86(現行)を開発する際に、助言をされたと聞きました。
どんな話だったのですか?

A■あったのは、開発者から「スポーツカーの企画を通すにはどうすればいいか」という相談だった。
でも、それは少量生産で売れないけど、趣味性が高く、なので高く(高価)なりがちといった、
“スポーツカーは儲からない”という前提であった。
こちらからお伝えしたのは「ロードスターは儲かる努力をしている」という事だった。
例えば部品コストに関しても当然だが、組立コストにしてもマツダは混流生産を行っているので、
デミオと同じラインで作られ、同じコストで組まれている。
つまり、儲からないならば、儲かるように技術でどう解決していくか
というのがエンジニアの仕事だよ、とお伝えした。

スポーツカーは開発者の夢でもあるし、作るのは楽しい。
しかし、メーカーは作るだけでなく、育てるという努力も大切だ。
その点でMR−SやS2000が続かなかったのは残念だし、
86リリース時には「20年続くスポーツカーにしてください」と祝辞をした。
これは本当の事ですよ。

以上

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